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頸動脈狭窄症
【要点】
頸動脈狭窄症とは、脳へ血流を送っている頸部の動脈に主に動脈硬化が原因で狭窄を生じた状態です。これが原因で脳血流が低下したり、また動脈硬化の一部が剥がれて脳血管へ飛散して、脳梗塞を起こしうる病気です。
動脈硬化は、高血圧や高脂血症、糖尿病といった生活習慣病や、喫煙・飲酒などの嗜好によって進行することが知られています。
この病気は脳梗塞を発症した後の精密検査で初めて診断されることもありますが、頸動脈の超音波検査(エコー検査)や頭部や頸部のMRI等の画像検査で、脳梗塞を発症する前に発見することが出来ます。
【治療について】
頸動脈狭窄症を認めると、まずは生活習慣病があればその治療と生活の是正を行います。また生活指導だけでは脳梗塞のリスクが高いと判断した場合に、血液をサラサラにする薬(抗血小板剤)や脂質代謝改善薬の内服を開始します。
しかし狭窄の程度が高度であったり、狭窄が進む場合は、脳梗塞を発症する危険性が高いとされています(今まで脳梗塞を発症していない病変でも狭窄度が70%を超えるようになると、年間10%程度の危険性で脳梗塞を発症します)。またこの狭窄病変が原因で脳梗塞を引き起こしている場合、狭窄度が70%以上であると脳梗塞を繰り返して生じる危険性が年間12~15%程度とさらに高くなります。このような場合にはお薬の治療に加えて、血管壁に溜まっている脂を処理する(狭くなっている頸動脈を広げる外科的な治療)が推奨されます。
【外科的治療について】
外科治療には切開手術(頸動脈内膜剥離術)と血管内治療(ステント留置術)があります.
【頸動脈内膜剥離術】(切開術)
全身麻酔を行い、首に切開を行って頸動脈を露出させます。そして、頸動脈自体を切開し、血管を狭くしている原因となっている血管壁のコレステロールや脂肪の塊りを手術で取り除く方法です。切開した頸動脈は、最後に元通りに縫合します。
中:動脈硬化病変を摘出。
右:開いていた頸動脈を丁寧に縫合。
【頸動脈ステント留置術】(カテーテル治療)
局所麻酔下に足の付け根(稀に肘)から血管の中へカテーテルを挿入し、頸動脈の狭窄部にレントゲン透視下に誘導します。そして血管の狭くなっているところで風船を拡張させ、広げた血管が再び狭くならないようにステントとよばれる金属を留置する治療です。
詳細は 血管内治療のページ(頸動脈ステント留置術) をご参照ください.
これらの外科的治療は、すべての患者さんに可能という訳ではなく,狭窄の部位や程度,患者さんの全身状態や合併する病気などによって,どちらも可能な場合もあれば,いずれか一方しかできない場合もあります。
総合的に判断して、推奨される治療方法をご提案させて頂きます。
【頸動脈狭窄症と診断された場合】
まず外来で、あるいは入院して頂き、超音波検査やMRI、造影を用いたCT検査、カテーテル検査等で、病変部の精密検査を行います。またその際に血液検査等の全身精査を行い、現在の身体の状態も調べ、年齢なども総合的に評価しお薬での内科的加療が望ましいか、また外科的治療をお勧めするかを判断致します。
外科的治療については、切開手術とステント留置術のどちらが望ましいか、患者さんの御希望も踏まえて選択することになります。
頸動脈狭窄症による脳梗塞で入院し加療を受けておられる患者さんについては、治療と並行して精密検査を行い、現時点で外科的治療が必要かどうか、また必要であっても緊急性の有無について当院の脳神経内科と連携をとって最適な治療を検討致します。