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    脳梗塞




  • 【要点】

     脳梗塞とは、脳の血管が何らかの原因で狭窄(狭くなる)、閉塞(つまる)し、その先にある脳細胞に血液が十分に行き渡らなくなることで、脳細胞が死んでしまう病気です。脳梗塞が起きると、その部位によって手足や顔面の麻痺、言語障害などの様々な症状が生じ、場合によっては意識障害や呼吸不全等の致死的な状態となります。
     脳は非常にデリケートな組織のため、脳に血液が供給されないと短時間でも症状が出現してしまい、一度脳梗塞となると、その部位の細胞が復活することはないため、後遺症として症状は残ってしまいます。しかし、脳の細胞が完全に死ぬ前であれば、早急に血流を再開することで元に戻る可能性があります。一方で一度脳梗塞が完成した場所に血液の供給が再開されると、脳組織が復活しないばかりか、組織が弱っているために出血を来して(出血性梗塞)、かえって悪化することもあります。
     そのため脳梗塞を発症してからどれだけ短時間のうちに血液の供給を再開できるかが、脳梗塞の急性期における治療には重要となります。
     また脳梗塞の急性期には再発することも多く、さらに重症化することもあり、早期より再発予防を行うことも大事です。



    【脳梗塞急性期の治療について】

     脳梗塞の治療は、脳梗塞を発症してから治療開始までの時間が重要です。治療開始までの時間が短いほど、様々な治療法が選択できます。

    ①アルテプラーゼ(t-PA)静注療法
     アルテプラーゼとは血栓を強力に溶かす薬で、この薬を投与することで、血管を閉塞させている血栓を溶かして血液の供給を戻す治療法です。この薬剤を投与することで症状が改善する(脳梗塞を起こす前に血行が再開する)可能性が高くなります。ただ全身で出血を起こしやすくなったり、出血性梗塞を起こして、かえって悪化し致命的な状態になることもあります。
     そのためこの治療法は発症から(脳梗塞発症する前の元気な状態を確認してから)4.5時間以内に投与する必要があります。また頭蓋内に出血を来したことがないか、他の病気の有無など、いくつかの条件を満たす必要があります。


    ②機械的血栓回収術(血管内治療)
     血栓で閉塞した部分にカテーテルを進めて、血栓を直接吸引したり、絡め取ることで、血栓を除去し血液の供給を再開させる治療法です。
     脳を栄養する血管の中でも、広範に脳に血液を供給している幹となる部分で閉塞すると、重篤かつ様々な症状が出現します。造影剤を用いたCT検査やMRIなどの頭部画像検査で本幹部分に閉塞を認めた場合には、アルテプラーゼ静注療法に並行して、この治療を行います。
     当施設は、脳血管内治療専門医が常在しており、いつでもこの治療法を行える体制を整えています。

     詳細は 血管内治療のページ(機械的血栓回収術) をご参照ください.


    ③抗血小板剤・抗凝固剤の投薬
     脳梗塞は、不整脈が原因で心臓の中で血液が固まって(血栓)飛散することで脳を栄養する血管が閉塞する心原性脳塞栓症と、動脈硬化により脳を栄養する血管が狭窄・途絶してしまうアテローム血栓性脳梗塞、そして微細な血管が詰まるラクナ梗塞の3つのタイプに大別されます。
     再発予防には血栓を形成しにくくする、あるいは詰まりにくくするために、血をサラサラにする薬を開始することが必要です。
     一般的に心原性脳塞栓症には抗凝固剤、アテローム血栓性脳梗塞・ラクナ梗塞には抗血小板薬が選択されます。
     脳梗塞の再発の予防のため、診断後は早急に投薬による治療を行います。


    ④その他(全身管理・リハビリテーション)
     脳梗塞は、脳に強いストレスがかかるため、肺炎や心不全等の脳とは直接には関係のない合併症を患うことがあります。脳梗塞発症以前からの持病が悪化することもあります。そのため脳梗塞の精査・再発予防の治療を行いながら、全身管理を行うことが重要です。
     また極力後遺症を少なくするために当院のリハビリテーション科と協力し、早期よりリハビリテーションを行います。リハビリテーションは単純に手足や顔面の麻痺の改善だけでなく、普段の日常生活に戻るための食事・排泄・移動等の訓練、嚥下機能(食べ物を飲み込む能力)や言語機能の評価・改善を目指します。
     脳梗塞再発予防の治療(薬物療法・外科的治療)と全身管理が落ち着き、生活の自立および社会復帰に向けてのリハビリテーションが必要と判断された場合には、よりリハビリテーションに特化した回復期リハビリテーション病棟のある病院へ転院を勧めています。
     直接退院が可能な患者さんは、当院の医療社会福祉士(医療ソーシャルワーカー)と相談し、安心してご自宅で生活できるような体制をとっています。



    【様々な診療科、職種とのチーム医療】

     脳梗塞が疑われると、当院では脳神経内科と協力し、迅速に精査を行った後に可能であればアルテプラーゼによる治療を開始し、早急に血管内治療が可能かどうか、必要かどうかを判断致します。
     入院後は当院のリハビリテーション科専門医により、最適なリハビリテーションのメニューが検討されます。医師・看護師・リハビリテーション療法士・薬剤師・医療ソーシャルワーカー等の多職種が治療に携わった高度なチーム医療を患者さん・御家族に提供致します。