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三叉神経痛
【要点】
三叉神経とは、主に顔面の知覚を司っている神経のことです。
三叉神経は、脳幹という脳の大変重要な部分(意識や呼吸、循環をコントロールしている場所で、ここが障害されると意識障害や手足の麻痺などの、重篤な障害を引き起こします)に起源をもち、大脳の下を通って顔面に分布します。三叉神経は、その名のとおり、三つ又に分かれて、第1枝が額、第2枝が頬、第3枝は口腔内や口唇・顎の付近に分布し、その領域の皮膚知覚を司っています。
顔面の痛みを生じる病気はいくつかあり、それぞれに原因が異なります。ヘルペス感染症や変性疾患などにより生じることもあり、その場合は原疾患の治療を行います。
血管や腫瘍によって生じる三叉神経痛の典型的症状は、数秒間続く発作性の顔面の激痛あるいは電撃痛で、通常感覚障害を伴いません。また、痛みは一側性がほとんどであり、三叉神経の第2-第3領域の痛みが多いです(三叉神経痛の3~4割を占めます)。
治療はお薬による治療、神経ブロック注射による治療、放射線治療、外科的治療があります。
【症状】
痛みは、咀嚼、歯磨き、洗顔、化粧(女性)、髭剃り(男性)のときに発生しやすく、生活のあらゆる場面で障害をきたします。
夜間の睡眠中は痛みが消失することが多く、また痛みには周期があって数週間から数か月の寛解期(痛みが軽くなる、無くなる時期)があることが多いです。
【検査】
外科治療の適応となるような三叉神経痛のほとんどは、症状と画像検査(MRI)で診断が得られます。
それぞれの画像検査の結果を総合的に評価し、安全な治療方針をご提供できるよう努めております。
【治療の必要性】
三叉神経痛の初期には、お薬の治療が効果的ですが、お薬の治療を長く続けていると、多くの方で効果が薄れてくることを自覚されます。またお薬が身体に合わずに止める方もおられます。
神経ブロック注射などの治療は、痛みを一時的に軽快させますが、根本的な治療ではないため効果は一時的で、逆にブロック治療による一時的な(痛みを止めている間の)顔面の知覚障害を伴います。またブロック治療には、長期間続けることで、永続的な顔面のしびれ感を生じる場合もあります。
放射線治療はガンマナイフ・サイバーナイフなどの定位放射線治療が選択されます。三叉神経に対して大量の線量をあてることで神経を変性させて神経をちょうどよく麻痺させていると考えられていますが正確にはわかっておりません。また症状の再燃を起こしやすいこともわかっており、高齢者に良い適応と考えられます。
三叉神経痛は、命にかかわる病気ではありません。しかし、激しい痛みのために、生活に支障を来したり、うつ病になってしまう方もいます。
このため手術による治療は、お薬による治療の効果が弱くなったり、お薬が身体に合わない、またはブロック治療などが十分に効かない場合に検討致します。
それぞれの治療のメリットとデメリットを十分にご説明し、患者さんの希望に沿った治療を心がけています。
【外科的治療】
神経を圧迫する血管を直接神経から減圧する方法で、微小血管減圧術と呼びます。
全身麻酔下で行います。後頭部に1円玉大の小開頭を行い、脳の隙間を利用して目的の部位まで進み、神経と血管を離す手術です。
手術の効果は80-90%は改善し、長期的にも70%は治療効果が得られることが知られています。
治療に伴う合併症としては、複視(物が二重にみえる)や顔面の知覚障害、髄液漏や感染などが報告されています。
除圧前(左)は血管による圧迫で三叉神経が変形しています。
除圧後(右)はテープによって血管による三叉神経への圧迫がなくなっていることがわかります。
A:血管 *:三叉神経 T:テープ
また、創部も極力目立たない工夫を凝らしており、治療を受けて頂いた患者様から好評を得ております。